社内では数少ない Vim 使いの「ブイ」(仮名)です。「Vim のすゝめ」と題しまして、連載形式で「vi と Vim の違いが分からない読者」に Vimの魅力を伝える記事を書くことになりました。いつまで続くかは未定ですが、しばらくの間お付き合い頂ければと思います。ただしこの記事では、Emacs の機能と比較して優劣を述べる訳ではありません。あくまで vi との比較でお話をしますので注意してください。
この記事は vi の知識を前提としています。もしあなたが vi のことを知らないのなら、まずは vi を学ぶことをオススメします。本で勉強するなら、オライリーより出版されている「入門 vi 第 6 版」が良書です。
vi とは異なり、Vim はプログラマのための本格的な開発環境です。最近、Vim は外部のプラグインのほうが有名になってきていますが、Vim の魅力を知るためなら、外部のプラグインを導入する必要はありません。デフォルトの機能だけでも十分魅力的なのです。連載では、デフォルトの機能を中心に解説をします。ただし、時には外部プラグインや設定についても紹介することがあります。
第一回目の今回は、Vim を最小限の設定で使いはじめることを目標とします。
0 この連載を読む前に¶
基本的に、この連載記事は Vim 7.3 (7.3.600) 上で動作の確認をしています。これよりも古い Vim (7.2, 7.1, 7.0) でも動作する可能性がありますが、確認はしていません。連載中には Vim plugin を紹介することもありますが、Vim plugin は環境により動作しないことがあります。試してみる場合は注意してください。検証は Ubuntu Linux 環境で行っています。しかし、大部分の解説は Windows 環境や Mac OS 環境でもそのまま適用できると思います。
1 Vim をインストールする¶
まず、Vim をインストールしなくては始まりません。大抵の Linux ディストリビューションでは、デフォルトでインストールされていることも多く、それほどインストールに苦労することはないでしょう。インストールされていない場合も、パッケージやインストーラが用意されているでしょうから、Vim をソースコードからコンパイルしてインストールする必要はないのです [1]。
2 .vimrc を作成する¶
.vimrc とは Vim 用の設定ファイルです。普通はホームディレクトリの下に置きます [2]。今回は Vim のための高度な設定を解説するつもりはないのですが、残念ながら、.vimrc を作成しない限り、Vim は Vim として動作しません。せっかく Vim を使用しているというのに、それではあまりに勿体無いので、まずは最小限の .vimrc を作成しましょう。私が考える、Vim の最小設定は以下です。
$ cat ~/.vimrc
set nocompatible
syntax enable
filetype plugin indent on
3 .vimrc の設定を理解する¶
今回は 3 行しか設定がありませんが、この 3 行はどういう意味の設定なのかについて解説をします。
まず、set nocompatible
は Vim を vi 互換モードではなく、Vim として使用するという命令です。Vim を使うのなら、基本的に設定しておくべきです。Vim に外部プラグインを導入する場合も、この設定がないとプラグインはまともに動作しないでしょう。Vim の vi 互換モードについては、今後の連載で解説予定です。
次の syntax enable
は、Vim のシンタックスハイライト機能をオンにする設定です。Vim には vi にはない豊富なシンタックスハイライトを備えています。シンタックスハイライトは見ためが美しくなる、という他にも、キーワードのタイプミスに気付きやすいという実用的な利点があります。例えば、C
言語で「retrun」と「return」を間違えてもすぐに気付くことができます
[3]。
最後の filetype plugin indent on
は、Vim のファイルタイプ [4] 検出と、ファイルタイププラグインとインデントプラグインをオンにする設定です。ファイルタイプの検出とは、ファイルを開いたときにファイルの種類を検出する機能のことを言います。この機能により、Vim は .pl ファイルを開いたとしても、それが Prolog ファイルなのか Perl スクリプトなのかを判別することができるのです。ファイルタイププラグインとは、ファイルの種類毎に定義された共通の設定のことです。インデントプラグインはファイルタイプ毎に定義されたインデント設定です。
さて、これであなたの Vim は Vim として動作するようになりました。次回からは本格的に Vim の機能について解説を始めようと思います。次回は Vim の「バッファとウインドウ」について解説します。
EX Vim をインストールできない人へ¶
管理・運用系の作業を行っている場合には、対象が Linux OS でない限り、管理・運用している PC に Vim がインストールされていることは少ないようです。残念ながら、そういう場合は諦めるしかありません。どうしても Vim をインストールできない環境で Vim を使用するための魔法はないのです。そのような環境で本格的なプログラム開発をすることはないでしょうから、Vim の恩恵を受けることも少ないと言えます。Vim の真価はプログラムを開発する際に発揮されるのです。Vim はあなたの作業環境となる PC にインストールしましょう。
[1] | もちろん、一部の Vimmer には最新版の Vim をコンパイルすることに快感を覚える人もいるようです。 |
[2] | Windows 環境では、Vim をインストールした先もしくはホームディテクトリ下に “_vimrc” を置くことが多いです。これは、Windows 環境では拡張子のみのファイルをうまく扱えないことがあるためです。 |
[3] | Vim のデフォルトではシンタックスハイライトされませんが、Linux のディストリビューションによっては、デフォルトでシンタックスハイライトが有効になっていることがあります。シンタックスハイライトを無効にしたい場合は、”syntax off”を .vimrc 内に書きましょう。 |
[4] | そのファイルの種類を表す文字列のことです。例えば、Perl スクリプトならファイルタイプは “perl” です。あなたに Emacs の知識があるのなら、ファイルタイプとメジャーモードはほぼ同様のものと考えるとよいでしょう。 |