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ネッタマ 2007年 8 & 9 月号

渋さを知らないジャズ


皆さんお久しぶりでございます。 休んでいたらあっという間に夏、夏の音楽といえばジャズでしょう。 え、夏といえばロック?ロック・イン・ジャンはひたちなかでやるし、 フジ・ロックもあるしサマーソニックも? そう、夏フェスはすっかりロックで定着したよね。 もちろんロック、いいんだけど、10年くらい前までは、ジャズフェスが夏の風物詩だったよな・・・。 フジはフジでも、昔は「マウント・フジ・ジャズ・フェスティヴァル」だったし。 ジョージ・アダムスのテナーが咆哮し、ドン・プーレンのピアノが爆走して(遠い目)・・・。 ひたちなかジャズ・フェスティヴァルってのもあってさ、カサンドラ・ウィルソンが歌ったんだよ。 ハービー・ハンコックも来るはずだったのに、台風でフェス自体が流れてさ・・・(涙目)。

今や、ジャズって、「渋い大人の音楽」って雰囲気だよね。 しかし、本当にそうか?実はそれだけじゃなかったと思うんだ。 こないだ、アメリカっぽい雰囲気を売りにしたレストランに行ったら、ディキシーランド・ジャズがBGMにかかっていた。 よく聴くとこれが凄いんだ。異常な盛り上がり。 盛り上がりを宿命づけられているかのような、つまり、日常の苦しみや悲しみを、全力で吹き飛ばそうとしている束の間の祝祭。 レコードには残っていないけれど、ルイ・アームストロング全盛期のソロなんて、延々20分も続いたんだって? ジャズとは、本来そういう音楽だったと思うし、そういう部分はいまだ残っているはずだ。 「渋さ知らズ」という集団がなぜ自ら、「渋さ」を「知らない」と言うのか。 つまりそれは、ジャズが「渋い」音楽になってしまうことへの、ユーモアを込めた抵抗だと思うんだ。

そんなわけで、ここから、僕の独断と偏見で渋さ知らズ」なジャズをご紹介したいと思います。 まあ、昔のジャズはだいたいみんな熱かったけれど、中でも特に激熱で、しかも(ここが大事だが)祝祭感を持ったものを。 つまり、「幻想のジャズ夏フェス」であります。どれもジャズ・ファンの方々はよくご存知の名前ですが。

まずはなんといっても、テナー&ソプラノ・サックスのジョン・コルトレーン(1927〜67)! この人を聴くとまさに激動の60年代という感じだなあ。ジャズが抵抗の音楽だった頃の、灼熱の祝祭。 <マイ・フェイヴァリット・シングス>を20分も30分も、血管の切れそうなソロでひたすら吹きまくるんだから、ジュリー・アンドリュースもびっくりだ。 2時間も3時間もライヴで吹きまくったあと、お客が楽屋を訪ねると、コルトレーンまだ吹いていた! そして彼は40歳で燃え尽きて世を去ったのだった・・・。 僕のおすすめは、最近復刻されたばかりの『マイ・フェイヴァリット・シングス:コルトレーン・アット・ニューポート』(インパルス、輸入盤)。 一曲目<アイ・ウォント・トゥ・トーク・アバウト・ユー>後半の無伴奏ソロですでに鼻血が噴出するのを感じるが、数ある中でも最高の名演とされる<マイ・フェイヴァリット・シングス>にはもう昇天。 さらにその後、ついに完全版として復刻されたこれまた沸騰しまくりの<インプレッションズ>が続くのだから、何をかいわんや。これ でもまだ足りない方は、晩年の『ライヴ・イン・ジャパン』をどうぞ。 <マイ・フェイヴァリット・シングス>だけで 1時間。死にます。演奏するほうも聴くほうも。 あ、コルトレーンの同僚だったピアニスト、マッコイ・タイナーの70年代作『サハラ』も熱いですよー。

マイルス・デイヴィス(1926〜1991)。 「えっ、マイルス・デイヴィスって、『カインド・オブ・ブルー』で『いつか王子様が』で『マイ・ファニー・ヴァレンタイン』な、クール&ビューティの人でしょう?」 はい、確かにそれもあります。しかし1969年から75年までのマイルス・デイヴィスは、それはそれは熱いのです。 この時期マイルスは、「ジャズはこのままじゃいけねえ、ロックなど蹴散らす真のブラック・ミュージックにならなくちゃいけねえ」と考え、 ロックやらファンクやらソウルやら、ブラック・ミュージックのあらゆるエッセンスをぶち込んで大釜でぐらぐら煮立てたようなものすごい サウンド・スケープを次から次へとぶちかましていた。 一枚一枚アルバムの傾向がまるで違うが、「祭り度」の高さということで言えばキース・ジャレットとチック・コリアのツイン・キーボードがうなる『ライヴ・アット・フィルモア』、 ファンク暴走族というべき『ライヴ・イヴィル』、ヒップホップを先取りした上シタールまで鳴りわたる『オン・ザ・コーナー』、 燃え尽きて 6年間の引退を余儀なくされる直前の、地獄(天国?)の蓋が開いたような壮絶ジャパン・ライヴ『アガルタ』『パンゲア』あたりだろうか。 体力は要るが、ブラック・ミュージックの桃源郷(もしくは魔境)めぐりとして一度は体験されたい。 ただし最初は『イン・ア・サイレント・ウェイ』(テクノ&アンビエント的にクール)、 『ビッチェズ・ブリュー』(豊穣なるブラック・ビューティ宣言)、 『ジャック・ジョンソン』(これぞマイルスのロック)あたりから入るのが王道かな(以上すべてソニー)。

アート・アンサンブル・オブ・シカゴ。1960年代から活躍しているフリー・ジャズ・グループ。 アフリカ濃度の高さという点では上記の2人を上回る。 トランペット、サックス類(やたら種類多し)、ドラム、パーカッション(めったやたらに種類多し)、 ベースという編成で、アフリカ部族風のボディ・ペインティングをして、めちゃくちゃファンキーなフリー・ジャズ。 かなりアヴァンギャルドなことをやっているのに、妙にお祭り感がある。 ブリジット・フォンテーヌの名盤『ラジオのように』に参加していたりするが、僕が一番好きなのは70年代末から80年代初頭にかけてECMレーベルに録音していた頃。 ライヴ『アーバン・ブッシュメン』(タイトル最高)もいいが、最高傑作は『フル・フォース』ではないか。 冒頭の壮大なフリー・ジャズ交響楽〈マグ・ゼルマ〉から、突如ディキシー・ランド・ジャズの記憶が甦る<ケア・フリー>になだれこむところは何度聴いても最高だ。

おおっと、もう字数がない。サン・ラとかオーネット・コールマンとか山下洋輔とか、最近だったらメデスキ、マーティン&ウッドとか、触れたい人はいくらでもいるが、無念。 そして言いたいのは、もうお分かりでしょう、「渋さ知らズ」こそは、こうしたジャズ本来の「祭りの高揚感」を現代において未曾有のパワーで体現している、っていうこと!


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