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あらたな響きへ、ふたたび。
トリオ・コンサート吉野直子、H.ハーゲン、W.シュルツ

フルート、ヴィオラ、ハープ。
発音原理がまったく異なり、いずれも落ち着いた音域での表現を得意とするためでしょうか。かつてフルートやハープには機構上の困難があったためでしょうか。この3楽器を組み合わせる試みは、長らく無謀なことと考えられていたようです。――少なくともC.ドビュッシーがその最晩年に不朽のソナタを書き上げるまでは...。やがて、A.オネゲルやS.グバイドゥーリナ、あるいは武満徹らの手でその可能性はさらに拓かれ、いまやこの組み合わせはクラシックな室内楽に残された数少ないスリリングな編成のひとつとなりました。さらにこの3つの楽器によるコンサートなら、ソロやデュオとさまざまに組み合わせを替えて、劣らず魅力的な作品を編み込むこともできます。

1992年5月19日水戸芸術館コンサートホールATMで「あらたな響きへ」と題する演奏会がありました。出演したのはフルートのA.ニコレ、ヴィオラの今井信子というヴェテランふたり、そして新進気鋭の吉野直子という3人。このとき武満の新作<そして、それが風であることを知った>が世界初演され、H.ホリガー(日本初演)、E.デニーソフ、G.タイユフェルらの「あらたな響き」がホールを満たしたのです。
あれから7年、吉野直子は新世代を代表する奏者となり、若きヴィオラの俊英 V.ハーゲン、フルートの名手 W.シュルツとともに、かつてと同じ楽器の組み合わせでふたたび芸術館に登場します。
ことしのプログラムのなかで、武満の2曲とI.ストラヴィーンスキイの<エレジー>、ドビュッシーのソナタは、7年前にもとりあげられた「名作」たち。現代のもっとも注目すべき作曲家のひとりとなったグバイドゥーリナの作品からは、東洋と西洋を扱う文学作品2篇に触発された、黙想的・詩的な<喜びと悲しみの庭>が紹介されます。同じく単一楽章によるB.ブリテンの<ラクリメ>は、ヴィオラ奏者とハープ奏者双方の構成力を試すかのような難曲。ドビュッシーの<シリンクス>は、この楽器のファンなら誰もが知っていることでしょう。
フルート、ヴィオラ、ハープという編成が、どんなにか活気と精妙さに満ち、気品や愉悦をもたらし、時に深き淵を教示するものか。同一作品にも奏者の個性がどんなにか違った光を照射するものか。同一の編成でも、今世紀の卓越した作曲家たちがどんなに違った物語を綴ってくれることか。フルート、ヴィオラ、ハープによる、あらたな響きへ、ふたたび。

日時 1999年6月26日(土)
18:00開場、18:30開演
会場 水戸芸術館コンサートホールATM
料金 A席 3,500円/B席 2,500円 (全席指定)
チケット発売中

プログラム
グバイドゥーリナ(1913- ):喜びと悲しみの園
ブリテン(1913-76):ラクリメ―ジョン・ダウランドの歌曲の投影―
武満 徹(1930-96):海へIII
武満 徹:そして、それが風であることを知った
ストラヴィーンスキイ(1882-1971):エレジー
ドビュッシー(1862-1918):シリンクス
ドビュッシー:フルート、ヴィオラとハープのためのソナタ

出演:W.シュルツ(フルート)、V.ハーゲン(ヴィオラ)、吉野直子(ハープ)

*「クラシック・ニュース」 http://www.music.co.jp/classicnews/ の「インタビュー@クラシック」から、 ヴォルフガング・シュルツと吉野直子のインタビューのリアルビデオ・ファイルをご覧になれます。


プロフィール

吉野 直子 (Naoko Yoshino)

ロンドン生まれ。6歳よりS.マクドナルド女史のもとでハープを学ぶ。第1回ローマ国際ハープ・コンクール第2位入賞(1981年)、第9回イスラエル国際ハープ・コンクール優勝(85年)。アリオン賞(85年)、村松賞(87年)、芸術祭賞(88年)、モービル音楽賞奨励賞(89年)、文化庁芸術選奨文部大臣新人賞(91年)、エイボン女性芸術賞(91年)を受賞。
これまでにベルリン・フィル、イスラエル・フィル、チューリヒ・トーンハレ管、フィルハーモニア管、フィラデルフィア管、水戸室内管ほかのオーケストラ、Y.メニューイン、Z.メータ、小澤征爾、G.シノポリ、W.サヴァリシュ、R.F.デ・ブルゴスらの指揮者と共演。
室内楽では、G. クレーメル(Vn)、A. ニコレ(Fl)、J.=P. ランパル(Fl)、J. ゴールウェイ(Fl)、W.シュルツ(Fl)、工藤重典(Fl)、佐久間由美子(Fl)らと共演。リサイタルはニューヨーク、ウィーン、ロンドン、東京、大阪などでおこなっている。
オーストリアのザルツブルク音楽祭、ロッケンハウス音楽祭、イタリアのストレーザ音楽祭、スイスのダシュタード音楽祭、ダヴォス音楽祭、日本のサイトウ・キネン・フェスティヴァル、アメリカのマールボロ音楽祭などの著名な音楽祭に招待され、ソロで、あるいは室内楽、協奏曲を演奏している。
水戸芸術館にも数多く出演している。水戸室内管弦楽団とは、90年の開館記念コンサートにおけるモーツァルト<フルートとハープのための協奏曲>から、昨年の欧州楽旅・第33回定期における武満<海へII>に到るまでしばしば共演。室内楽ではATMアンサンブル(92年)、G.クレーメル(92年)との共演もあり、ニュー・イヤー・コンサートでも出演している。96年には「中学生のための芸術鑑賞会」で水戸市の中学1年生のために演奏した。


ヴェロニカ・ハーゲン (Veronika Hagen)

ザルツブルク生まれ。6歳でザルツブルクのモーツァルテウム管のソロ・ヴィオラ奏者の父親から音楽教育を受ける。その後、モーツァルテウム音楽大学でH.ツェートマイヤー、ハノーファー音楽大学でH.パイエルレに師事し、これらふたつの大学からコンサート・ディプロマを得る。
これまでにS.ヴェーグ(指揮)、N.アーノンクール(指揮)、P.グルダ(Pf)、T.グリンデンコ(Pf)、G.クレーメル(Vn)、G.コセー(Va)、H.シフ(Vc)らと共演。
オーストリアのザルツブルク音楽祭、ロッケンハウス音楽祭、スイスのルツェルン音楽祭、イギリスのエディンバラ音楽祭、フィンランドのクフモ室内楽フェスティヴァルに出演。
しかし彼女はなによりもハーゲン弦楽四重奏曲のヴィオラ奏者として広く知られ、優れた音楽性を発揮してきた。この四重奏団には創立以来参加し、世界各地で演奏会を開催しており、録音も多い。水戸芸術館にも96年に登場している。


ヴォルフガング・シュルツ (Walfgang Schulz)

1946年オーストリアのリンツ生まれ。ウィーン国立音楽大学でレズニチェクに師事。A.ニコレのもとで研鑽を積んだ。
独奏者としては、これまでK.ベーム、C.アバド、H.シュタイン、C.フォン・ドホナーニら著名な指揮者と共演。スイスのモントルー音楽祭、オランダのフランダース音楽祭、オーストリアのウィーン音楽祭、ザルツブルク音楽祭に出演。
室内楽ではウィーン・フルート・トリオ、ウィーン木管アンサンブルを結成し各地で演奏するほか、ウィーン・リング・アンサンブル、アンサンブル・ウィーン=ベルリンでも活動。
1970年よりウィーン・フィルハーモニー管弦楽団のソロ・フルーティスト。97年よりウィーン国立音楽大学教授。



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