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ラルフ・タウナー、自身を語る(特別寄稿)

2001年7月15日 ラルフ・タウナー ギター・ソロ&デュオ featuring 渡辺香津美 プログラム掲載)


僕がクラシカル・ギターに目覚めたのは22歳のとき、大学でクラシック音楽の作曲を学んでいた最後の年のことだ。最初に習得した楽器は7歳のときのトランペットだったが、すでに3、4歳のころからピアノで即興をやりはじめていた。このころから、幸運なことに、僕はダンスやポルカ、スウィング、ディキシーのバンド、マーチング・バンドの中で演奏する機会に恵まれていたんだ。この経験と、それからデューク・エリントン、ナット・キング・コール、ベニー・グッドマン、ルイ・アームストロングなどなど、78回転のSP盤のコレクションを耳にすることによって、僕はごく幼いうちに音楽の幅ひろい世界に目を開かされることになった。

僕は、ただちにクラシカル・ギターを先生のもとで学ぶことを決意した。そうしてウィーンに行き、カール・シャイト教授に2年間師事した。最初の年は週7日間、毎日10時間の練習だ。そうして僕はクラシックの演奏会をうまくやりとげることができるようになった。

勉強の間、ジャズ・ピアノへの興味はずっとわきにどけていた。しかし僕は、スタンダードなジャズ・コンボのために、また働きはじめた。 *1スコット・ラファロのいたビル・エヴァンス・トリオが、僕のジャズについての考えにとてつもない衝撃を与えたんだ。僕は彼に似たピアニスティックなアプローチを、作曲とクラシカル・ギターの即興演奏に応用した。そして1968年、僕はニューヨークに移り住み、ジャズの世界への門をこじ開けるべく、ピアノを弾いていた。ギターはもっぱら、ブラジルの音楽家たちと一緒のときに演奏した。この駆け出し時代に共演した音楽家は、 *2スタン・ゲッツ、フレディ・ハバード、ジミー・ギャリソン、ソニー・ロリンズなどだ。それに加えて僕の同世代である、 *3デイヴ・ホランドやブレッカー兄弟もいた。そのうち僕はギターのためによりたくさんの曲を書きはじめるようになる。そして1970年、ニューヨークで僕が共同で結成したグループ「オレゴン」と共に、集団のために曲をつくる完璧な方法を見つけたんだ。

こうして何年もかけて、普通とはいえないバックグラウンドから、ギター音楽への僕独自のアプローチがかたちづくられていった。それは、この楽器から、ふつう聞かれるクラシカル・ギター固有の音楽を超えた、よりピアニスティックな音楽を引きだそうというものだ。それに僕は、まるで音楽が複数の楽器によって奏でられているかのような印象をかきたてるのも好きなんだ。聴く人を音楽の物語の中に引きこみ、この音楽がひとつのギターによって演奏されている音楽であることを忘れさせるようなやり方がね。


ラルフ・タウナー

(訳:水戸芸術館音楽部門主任学芸員 矢沢孝樹)


訳注

1. スコット・ラファロのいたビル・エヴァンス・トリオ
ビル・エヴァンスは斬新な和声感覚で、バド・パウエル以降のジャズ・ピアノの流れを変えた偉大なピアニスト。キース・ジャレットやリッチー・バイラークなど、70年代以降のジャズ・ピアニストたちに与えた影響の大きさは計り知れない。スコット・ラファロ(ベース)とポール・モチアン(ベース)を擁した伝説的トリオは59年から61年までの短期間に活動(ラファロの事故死によって終結)、3者の対等なインタープレイはピアノ・トリオの表現の地平を広げた。

2. スタン・ゲッツ(as)、フレディ・ハバード(tp)、ジミー・ギャリソン(b)、ソニー・ロリンズ(ts)
いずれも60年代のジャズ・ジャイアンツ。スタン・ゲッツは白人テナーの名手として長く活躍。ジョアン・ジルベルトと組んだボサ・ノヴァ・アルバムもヒット。フレディ・ハバードはファンキーから新主流派、フリーまで驚くべき守備範囲を誇る。ジミー・ギャリソンはジョン・コルトレーン(ts)の「黄金のカルテット」のメンバー。ソニー・ロリンズはコルトレーンと並ぶ60年代モダン・ジャズ・テナーの巨人。タウナーが幅広いアーティストから影響を受けたことがわかる。

3. デイヴ・ホランド(b)、ブレッカー兄弟
デイヴ・ホランドはチック・コリアやマイルス・ディヴィスのグループで活躍。ECMで『ジャンピン・イン』など多くのリーダー作を発表している。ブレッカー兄弟[ランディ(tp.) マイケル(ts.)]は70年代以降のNYジャズの代表的存在。『ヘヴィ・メタル・ビ・バップ』などの快作がある。



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