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弓の伝説が始まる。

たとえ遠い昔に書かれていても、変わらぬ光を放ちつづける音楽がある。 残された楽譜の数々には、作曲家たちの感情のゆらぎが、あるときは深い思索を、 あるときはほとばしる情熱を伴った音楽となって、ぎっしりと詰めこまれている。 それらは、奏でられさえすれば、すぐさま楽の音となって時のへだたりを超え、 今を生きる私たちの心を震わせる。 いつでも人びとに求められ、呼び起こされるのを待っている、 そんな音楽たちを「クラシック」と呼ぼう。

Mito dell'arco(ミト・デラルコ/イタリア語で「弓(Arco)の伝説(Mito)」の意味) ―それは、水戸芸術館にこの秋誕生する、新しい専属弦楽四重奏団。 オリジナル楽器を手にした4人の音楽家が一同に会し、弦楽四重奏の「クラシック」たちに取り組む。 ハイドンが「まったく新しい特別の方法で書かれている」と自負した作品33の真価とは? 作品76の成熟した筆致の中にほの見える心の風景は?モーツァルトのK.465のあの不思議な不協和音は、 どんなドラマを描こうとしているのか?作曲家のペン先にこめられた発見、驚き、喜び―その息遣いごと、 オリジナル楽器のみずみずしく精妙な響きによってすくい取り、 Mito dell'arcoが未知なる音楽の航海を始めようとしている。

Mito dell'arco―それは、弓をたずさえた4人の音楽の使徒と水戸芸術館とが提案する、 新しい室内楽のよろこび。歴史の街Mitoを拠点にした、伝説の誕生の瞬間を、どうぞ、お見逃しなく。


水戸芸術館専属古楽カルテット Mito dell'arco(ミト・デラルコ)
結成記念第1回演奏会

1999年9月8日(水) 18:00開場 18:30開演
会場:水戸芸術館コンサートホールATM
料金(全席指定):A席3,000円・B席2,000円
チケット発売:7月10日(土)
友の会優先予約発売日:7月7日(水)*電話予約のみ

ハイドン:弦楽四重奏曲 ト長調 作品33の5 Hob.III-41〈はじめまして〉
ハイドン:弦楽四重奏曲 ニ短調 作品76の2 Hob.III-76〈5度〉
モーツァルト:弦楽四重奏曲 ハ長調 K.465〈不協和音〉

Mito dell'arco(ミト・デラルコ)
クラシカル・ヴァイオリン:寺神戸 亮、ドミトリー・バディアロフ
クラシカル・ヴィオラ:森田芳子
クラシカル・チェロ:鈴木秀美



第 1ヴァイオリン:寺神戸 亮 Ryo Terakado

1961年ボリビア生まれ。
84年、桐朋学園大学首席卒業。東京フィルハーモニー交響楽団のコンサートマスターとして活躍するが、 オリジナル楽器演奏に専心するために同団を退団、オランダのデン・ハーグ王立音楽院に留学、 S.クイケンに師事。在学中よりその才能は高く評価され、 欧州の主要オリジナル楽器オーケストラのコンサートマスターを歴任。 現在はラ・プティット・バンド(以下LPB)のコンサートマスターを務め、独奏、 室内楽にも目覚しい成果を挙げ、日本を代表するオリジナル楽器奏者として活躍を続けている。 録音活動も活発で、95年にコレッリのソナタ集、96年にモーツァルト:協奏交響曲のCDでレコード・ アカデミー賞を連続受賞。現在、ベートーヴェン:ヴァイオリン・ソナタ全集の録音継続中。 水戸芸術館にもLPB、クイケン・アンサンブル、バッハ・コレギウム・ジャパン演奏会で登場している。


第2ヴァイオリン:ドミトリー・バディアロフ Dmitry Badiarov

1993年サンクト・ペテルブルク国立音楽院卒。
その後ブリュッセルの王立音楽院においてS.クイケン、F.フェルナンデスらに学び、 95年に首席を獲得。1995年以降LPB、エックス・テンポーレ、レ・タラン・リリーク、 ファン・ヴァセナール・オーケストラ等と共演を重ねる。 またバロック・ヴァイオリン製作家・研究家として活発に活動しており、 研究の成果をオクスフォード歴史的楽器研究者及び製作者による協会の季刊誌やイタリア、 ロヴェレートの古楽学会季刊誌等に掲載している。LPBメンバー。


ヴィオラ:森田芳子 Yoshiko Morita

東京芸術大学卒業。
ヴィオラを浅妻文樹、兎束俊之、百武由紀、ウルリッヒ・コッホに師事。 第30回学生音楽コンクール第3位。卒業の頃より、オリジナル楽器にも興味を持ち、 古楽奏法を大橋敏成、宇田川貞夫に、バロックヴァイオリンを若松夏美、 C.マッキントッシュ、E.ガッティに師事。BCJ、東京バッハ・モーツァルト・オーケストラ、 レストロ・アルモニコ東京、コレギウム・アルジェントゥムのメンバー。 現代楽器の分野でも活躍中。


チェロ:鈴木秀美 Hidemi Suzuki

1957年神戸生まれ。桐朋学園大学卒業。
井上頼豊、安田謙一郎に師事。第48回日本音楽コンクール第1位、 第27回海外派遣コンクール特別表彰。在学中よりオリジナル楽器奏者として活動。 84年デン・ハーグ王立音楽院に留学、A.ビルスマに師事。 86年、パリの第1回バロック・チェロ・コンクールで1位受賞。 その後、ソリスト、室内楽などで世界的な活躍を展開。 また「18世紀オーケストラ」に85年から93年まで在籍。 現在はLPBの首席チェロ奏者およびBCJの通奏低音奏者を務める。 録音も活発に行い、日本人初のドイツ・ハルモニア・ムンディレーベル専属アーティストとして同レーベルからバッハ、 ハイドン、ベートーヴェン等のCDを発表。 バッハ:無伴奏チェロ組曲のCDで文化庁芸術祭作品賞、 ラ・プティット・バンドと共演したハイドン:チェロ協奏曲集のCDでレコード・アカデミー賞協奏曲部門を受賞。 99年2月には水戸芸術館でバッハ:無伴奏チェロ組曲の演奏会を行い、絶賛を博した。



メンバー、鈴木秀美からのメッセージ

"mito"はイタリア語で『ミート』というふうに発音し、 英語の"Myth"と同じく『伝説』とか『神話』を意味します。 "arco"は弓。"mito dell'arco"は『弓の伝説』といった意味です。

昨今オリジナル楽器での演奏は世界各地でますます盛んになり、 種々の音楽祭や音楽学校の古楽器コースにやってくる奏者、 学生の顔ぶれは実に多彩です。日本にも著名な演奏家やグループが毎年数多く訪れます。 しかし、フェスティヴァルの中心となる大きなイヴェントやコンサートはオーケストラやオペラなど大規模なもので飾られ、 緻密な室内楽をする機会は今なおなかなか増えてこないのが実情です。 また、私たちのようなオリジナル楽器奏者の多くは複数のオーケストラやアンサンブルに属しており、 ある程度はオーケストラ主体の活動にならざるを得ません。

室内楽をする時間をもっと作りたい、どうやって活動すればよいかと考え話し合っていたところに、 水戸芸術館から『オリジナル楽器によるアンサンブルを』という提案とご援助をいただき、 ここに新たな弦楽四重奏団が誕生することになりました。

弦楽四重奏は古典派以降の演奏形態ですが、古典派にはまだバロックの習慣が強く残っています。 バロック、またそれ以前の音楽を長年演奏してきた、 そして今もしている私たちがこのグループで表現したいと考えているのは、 クァルテットという形態が定着し始めた頃からロマン派へ至る道程、 つまり18世紀後半から19世紀前半にかけての音楽です。

音楽を享受するものが貴族から一般市民へと移るにつれ音楽への要求も大きく変化していったこの時代、 楽器や弓もさまざまに変化していきました。 私たちは、この次々と移り変わっていく音楽をそれぞれに相応しい道具で表現しようと考えているのです。 また、知られていない作曲家や忘れられつつある作品に再び光を当てることも仕事の大切な部分です。

本や絵画などで『伝説』のように伝えられてきた弓や楽器をもって、 旧知の音楽に新たな側面を見出し、或いはまた、 経験と研究から生まれた弓使いによって室内楽の『伝統』に新たなページを書き加える…。 このクァルテットの名前は皆様にどのような意味として届くでしょうか。

新生《ミト・デラルコ》を暖かくご支援下さいますよう、心よりお願い申し上げます。

鈴木秀美



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