
TEL (029)231-8000
webstaff@arttowermito.or.jp
パイヤールへのオマージュ(賛)
Hommage --1 工藤重典 (フルート奏者、水戸室内管弦楽団メンバー)
パイヤール氏とは、かれこれ13年のつきあいになります。フルートのジャン−ピエール・ランパルやトランペットのモーリス・アンドレ、ハープのリリー・ラスキーヌなどの共演者として有名だったパイヤール室内管弦楽団の名盤を小学生のときから聴いていた僕にとっては、大変な憧れの人でした。
お付き合いのきっかけとなったのは、彼が確か4度目になるヴィヴァルディの四季のレコーディングの時でした。当時、LPからCDに切り替わったとき、時間が余りすぎるので、誰かフルート協奏曲を一曲か二曲吹いてくれる人がいないだろうかと、笛吹きを探していたらしいのです。するとどういう訳か僕に話が回ってきて、しかも、その時は直接、パイヤール氏が電話をしてきたので当惑したのを、今でも良く覚えています。
彼とは、うまもよく合ったので、運よく彼の室内オーケストラで数回に渡るレコーディング、フランス、日本、アメリカにおけるツアーも、随分やらせていただきました。特にバロック音楽に対する─但し、これは今流行りの古楽器によるスタイルではありませんが─感性のすばらしさは、特筆に値するものがあると思います。彼にとってバロックとは、生き生きとした人間の生命力であり、日常の出来事といった感じで、自然な音楽としてとらえているようす。そして、そのバランスの良さは天下一品で、それがおそらく万人に受け入れられた大きな要因だと思います。
アメリカツアーでの思い出話としては、大変に長い旅(11州を40日間まわった!)だったのですが、移動中はいつも不思議な計算器で訳のわからぬ数字と睨めっこしているので、尋ねると「ある惑星と地球との距離を計算しているところだ。」なんて言われて驚いたものです。
250以上のレコーディングをし、多くのディスク大賞をとり、ヴィヴァルディやフランス・バロック(彼言うところの「フランス古典音楽」)の名曲を世に紹介した功績は大きいものがあると思います。そのパイヤール氏が今回初めて水戸室内管弦楽団を指揮して、どんな音をだすのか、今から楽しみです。では、フランスの知性豊かな芸術家の香りに浸ってみることにしましょう。
Hommage --2 リチャード・シーゲル (チェンバロ奏者、パイヤール室内管弦楽団メンバー)
同僚であり、友であり
ジャン-フランソワ・パイヤール賛を書くというのは、難しいことでもあり、やりがいを感じることでもある。難しいというのは、言うべきことがたくさんありすぎるからだし、やりがいがあるというのは、彼についてならいくらでも賛辞を述べることができるからだ。
さて、ジャン-フランソワに会う前から、私はパイヤール室内管弦楽団のことは話に聞いていた。1960年の半ばまでには、このオーケストラはすでに世界的に有名な存在だったのだ。私はバロック音楽を発見しつつあり、ほどなくチェンバロ演奏を始めようというところだった。だから彼らの、バッハのチェンバロ協奏曲の録音(のちに私の師となったロベール・ヴェイロン-ラクロワとの共演)を聴くのは喜びだった。同様に、ヴィヴァルディ、ヘンデル、そして数多いバロック音楽の傑作たちの録音を聴くことも。
それから1971年、パリ音楽院で学ぶためにフランスに来たとき、彼に会う機会に恵まれた。実は最初の一年、私は彼の一番小さな息子に鍵盤演奏を教えていたのだ。彼の家でたくさんの夜をすごしたことを、覚えている。ちょうど一年が過ぎ、私はパイヤール室内管弦楽団で仕事をするようになった。この18年は常任メンバーであり、ジェネラル・マネージャーも10年務めている。こうしたさまざまな職務のおかげもあって、私は彼の指揮のもと、つきっきりで仕事をしてきた。ときには、私が彼の上司にもなった。いずれにせよ、それは豊かで、よい経験だった。
さて、ジャン-フランソワ・パイヤールについて何を語ったらいいものだろう?リーダーに望まれる点のひとつは、周りの人に、信頼感を与えることだ。この点、彼が優れたリーダーであることは間違いない。それが垣間見られるのは、彼が指揮をする時だ。彼は自分が何を望み、どんな響きとフレージングを聴きたいのかわかっており、演奏家たちはたやすく彼を信頼し、その音楽的判断に確信を持つことができる。だが、私にとっていっそう重要に思えるのは、彼が共に働く音楽家に対して見せる信頼だ。このオーケストラとはじめて共演した時から、私はジャン-フランソワに信頼されているように感じた。もちろん、厳しい要求はしてくる。技術的にも音楽的にも、すべてが適正であることが求められる。しかし彼からは、私も他のメンバーもみんな最高のものを発揮できることがわかっている、という信頼が伝わってきた。困難な箇所に来ても、私のことや私の演奏について心配しているようには、決して感じさせなかった。そのおかげで私は、自信を持って演奏し、私を信じてくれるリーダーのために、ベストをつくすことができた。彼が大声を上げる必要がなかった、というわけではない。
よきリーダーであるからには、はそうすることもためらいなくできる。だが幸運なことに、たびたび大声を出すまでもなかったのだ。
もうひとつ思い浮かんだのは、彼の飾り気のなさである。国際的に有名な存在だし、オーケストラとその録音が成功したというのに、多くの指揮者のように深刻ぶった感じがまったくしない。私たちはともに議論しあい、ともに働くことができたし、実際そうしてきた。私たちはともに発見し、私たちの音楽の細部についての同意を得た(ときには見解がわかれた)。それは私たちの音楽であり、彼だけのものではない。ジャン-フランソワを含めた私たちオーケストラの全員が、共に働き、音楽をつくり、そして楽しむのだ。これも、私にとっては、優れた指導者としての証である。
しかし、私たちの関係はそこに留まらなかった。30年以上にわたってさまざまな経験をするうちに、ジャン-フランソワは同僚であると同じく、友人であることもわかったのだ。私たちはツアーの間に、またリハーサルの後に、何時間も共にすごし、休暇を一緒にすごしたりもした。あらゆる経験をわかちあい、音楽以外の話題も語りあった(驚くことではないが、パイヤール氏は、音楽だけではなく、たとえばコンピュータや天文学といったたくさんのことに興味を持っている)。聴衆が彼の音楽から、知性、厳密さ、繊細さといった彼の特質を感じとるのを、そばで見ているのは楽しいことだ。
ジャン-フランソワ・パイヤールは成功した指揮者として知られている。彼は世界中で何千回もの演奏会を指揮し、300以上の録音をおこなった。私はとても幸運だった。なぜなら、「音楽家」と「人」を共に知るという喜びにさずかったからだ。
(訳;水戸芸術館音楽部門 松田善幸、矢沢孝樹)
協賛:
第一製薬株式会社、
(財)げんでん ふれあい茨城財団
協力:
全日本空輸株式会社
Copyright ©2001 ART TOWER MITO. All Rights Reserved. Created by TK.
Mail to: webstaff@arttowermito.or.jp