ボランティア事務局へのインタビュー
七字純子(しちじ・じゅんこ)さん
ボランティア活動は自発的な個人の参加によって行われていますが、学芸員の指導と事務局の支えによって成り立っています。今回はわがままな私たちの面倒を見てくれている事務局の一人、七字純子(しちじじゅんこ)さんにスポットを当てます。
―七字さんは1992年ボランティア活動のはじめから関わってこられましたが、最初のいきさつと5年間の感想を教えてください。私は「美術教育ボランティア」が発足するまで、「ATMフェイス」として当館に勤務していました。大学で美術教育を専攻していたので、当館の美術教育普及活動には関心があり、時々ワークショップのスタッフにも加わっていました。ギャラリーの来場者の中で「現代美術はわからない」と首をかしげ、作品に向かい合うきっかけをつかめないまま、足早に通り過ぎていってしまう方々を目の当たりにし、もう少し親切な対応があってもよいのではないだろうかと思っていた中で「美術部門にギャラリートーク専門のボランティアをつくる」という話を耳にし、とても良いアイデアだと興味をもちました。また、「一般市民の立場に近いボランティアがギャラリートークによって水戸芸術館と来館者の架け橋となる」という発想にもとても共感し、少しでも力になれればと「美術教育ボランティア担当スタッフ」として関わらせていただくことになりました。
ボランティア募集当初は、「本当にボランティアでギャラリートークをしてくれる人が集まるのだろうか」「どんな人たちが応募してくるのだろう」など不安でいっぱいでした。というのも、応募書類の一つに論文があり、その上、書類審査・面接と2段階の選考があるというボランティアの募集形態として当時では他に類を見ない全く画期的なものだったからです。ところが、ふたを開けて見れば、応募者は募集10名に対し、71名という予想をはるかに上回る結果となりました。また、水戸市内、水戸近郊の方はもちろん、県外、それもかなり遠方の方からの応募もあり、とても驚きました。
約1年間にわたる研修を経て活動を始めたボランティアも、現在ではギャラリートークの他に、ボランティア通信「168」の発行、レクチャーや外部研修の企画、インターネットを通しての情報交換、子どもたちを対象としたアンケート調査等、活動内容が豊富になっています。しかし、最近ではその意欲や向上心がかえってボランティア自身の負担を増やしているように思われます。
これは私の個人的な見方かもしれませんが、一般市民(現代美術入門者)に近い立場として発足したはずのボランティアが、今では5年間の活動の中で現代美術についての知識も豊富になり、専門家に近い立場に変化しつつあるように感じられます。私としては、もう一度初心に立ち返り「現代美術の楽しみ方を知っている一般市民の立場」を再確認していただきたいと思います。このような立場を維持することはとても難しいことですが、ボランティア発足の意義を考えると、大切なことではないでしょうか。
私はこの5年間ボランティア担当として、ボランティアの方々が早く水戸芸術館に慣れ、少しでも活動がしやすいようにと、自分なりに努力してきたつもりです。しかし、今思えば、あのときああしておけばよかった、こうしておけばよかったという反省も少なからずあります。
―アーティストとして作品を作られているし、美術教師でもあるなど多面的な活動をなさっていると伺っていますが、どんな日常なのでしょうか。
基本的に、自分自身の中では作品を作ることが中心であると考えています。学校で生徒たちの新鮮な感性から刺激を受けたり、水戸芸術館でさまざまな作品や作家と出会ったり、ボランティアの皆さんと交流したりすることは、私の作品作りの大きな糧となっています。
作品の作り手の立場から現代美術を見ることができ、芸術館で学んだことをわずかでも生徒に伝えることができる。そういう意味では、私にとって現在おかれているこの3つの環境は必要不可欠であると同時にほどよいバランスを保っていると思います。
―私たちボランティアへの率直な感想と要望を聞かせてください。
約5年の間、ボランティアの皆さんとご一緒させていただいていつも感心させられるのは、それぞれに仕事をもち、お忙しい方々が多いのにも関わらず、定例会や研修、勉強会、そしてギャラリートークなどの活動のために月3〜4日の貴重な時間を割いて下さっていることです。もちろん、活動日以外にも個人的にギャラリートークのための勉強や通信物の原稿執筆のために多くの時間を費やしているはずです。限られた時間の中でこれだけ密度の濃い活動を持続するのはとても大変なことだと思います。本当にいつも「お疲れさまです」と頭の下がる思いです。
発足から5年目を迎える現在、ボランティアの活動も安定の時期を迎えたと同時にいろいろな問題も浮上してきました。ボランティアの皆さんが行詰まりを感じ、何とか解決策を見出そうと苦しんでいる姿を見ると心が痛みます。皆さんの一番身近にいると思われる私自身も、ボランティア担当として今できることは何か、またボランティアの存在意義について改めて考え直してみようと思っているところです。ところで、今後のボランティアのあり方については、何度も何度も話し合いが重ねられ、少しずつ発展的な方向へと進みつつあります。そこで、新しい体制に移行する上では、ぜひ以下のことを考えておく必要があると思います。
水戸芸術館現代美術ギャラリー美術教育ボランティアの最大の魅力は20代半ばから60代までと幅広い年齢層で構成されているところだと思います。中でも、30代、40代のまさに働き盛りの男性が意欲的に活動しているということは特筆すべきことではないでしょうか。一般的に美術館など文化施設のボランティアを構成している大部分は、子育てを終えた主婦や定年退職された60歳以上の時間的にゆとりがある方々です。当館のボランティアにとって、世代の異なる人々が同じ目的をもって、何の制約も受けずに、自由にお互いの立場から意見を交換したり、子育て真っ最中の主婦や働き盛りのサラリーマンが意欲的に活動しているのはごく自然なことのように見えます。しかし、相対的に見ればかなり貴重なケースであることは間違いありません。
これから美術教育ボランティアの体制がどんなに変わっていっても、今まで同様、幅広い年齢層の参加が可能であり、時間的な制約がある人たちにも安心して活動できるような環境作りを大切にしてほしいと願っています。
*本ページの内容は、1997年2月1日発行当時のものです。
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