Scrambled Egg
「もうひとつのボランティア」
〜さまざまなボランティアのかたち〜
今回から新しいコーナー『スクランブルエッグ』が始まります。みなさんよろしくお願いします。
さて、このコーナーでは、さまざまなかたちで現代アートに関わっている人たちを取り上げていく予定です。現代アートとの関わり方といっても百人百様、いろいろな人間模様があります。私たちも、そのような様々な姿を紹介していく中で現代アートの魅力を再発見することができたらいいなと今から楽しみにしています。ご期待下さい。
今回は、去る4月1日から5月28日まで行われた「絵画考」展と並行して実施されたワークショップ、『相談芸術大学』の運営を支えたボランティア職員の方々に迫ってみたいと思います。題して「もうひとつのボランティア」です。相談芸術大学(以下相芸大と略)という、世界中どこを探しても無いような、ユニークな名称の大学のワークショップの担当職員を2カ月間ボランティアしてくれた人たちって、どんな人なのだろう?そんな疑問から、私たちの取材を始めました。
「相談芸術大学」での授業風景
はじめに、相芸大の卒業式が終わって1カ月ほど経った、相芸大の気分がまだ残っているボランティア職員の方々に応募したきっかけを伺ってみました。
本当は“学生”になりたかったのですが、貧乏だったためボランティアを選びました。
(小林佐希子さん/家事手伝い/25才)
水戸に来た時にたまたま募集のビラを手にしました。「へえー、こんなことでボランティアができるんだ」という印象でした。
(井上結子さん /フリーデザイナー /26才)
新聞で相芸大の学生の募集の記事をみて、まず最初は学生に応募しました。もともと絵を描くのは好きでしたから。ただ、それに落ちてしまったのでボランティア職員に応募しました。
(小菅典子さん/会社員/24才)
金銭うんぬんでなく、ただ自分のやりたいことを(または嫌いなこともあるかも知れないけれど)に飛び込んでみるのも楽しいことじゃないかなって…
(平石武夫さん/会社員/31才)
皆さん、さまざまな思いを抱いて応募していたようでした。“貧乏だった”(?)からというユニークな方や“何かアートに関するボランティアをしてみたい”というまじめな方まで色々です。共通しているのは、自分の興味ある現代アートのワークショップでボランティアができるから応募したというところのようです。
さて、ボランティア職員をされていた中で、どのように感じ、考えておられたのでしょうか?ちょっと伺ってみました。
ボランティアということで、料理を作ったり、イラスト描いて、着せかえ作ってと、ほんとうにこれでボランティアになるのかな、やりたいかどうかや趣味で作っていていいのかなと思っていました。(小菅さん)
今まで舞台裏の作り方を、作品を見ながら考えることはなかったのですが、ひとつの企画をやるということは、その作家以上の様々なエネルギーが必要なことがわかり、又、ぶつかりあっていて、化学反応を起こしているのだなぁ、と思いました。(小林さん)
いろいろと講義の準備のために、一睡もしないで仕事をしたのは、これが初めてでした。お金を一銭ももらっていないのにこんなに楽しく働いたのも、初めてでした。会社にいる時はこんなこと全然思わなかったです。正直言って、このまま相芸大に浸っていたい、ここで止まっていてはいけないと思いつつ、あまりにも楽しすぎましたから…(井上さん)
どうやら、「自分がやりたいと思っていることが自由にできる場」が、用意されていた、というのが相芸大の最大の魅力だったのではないでしょうか。最後に「相芸大にボランティア職員として関わったことで、自分自身の中でどのような変化がありましたか?」という質問をしてみました。
相芸大ってまだ私の中に残っているようで、今でもテレビなどで“ソウダン”とか“オザワ”と聞くとピクッと反応してしまいます。この相芸大のボランティア職員は、阪神・淡路大震災のボランティアとは違うけれど、仕事をしていると何か満たされているような幸福感でしょうか?つくづくボランティアって、自分のためだったんだなと感じています。(井上さん)
スピードと効率と努力と根性が唯一無二の評価にはけっしてならない場所がここにもあった。終わりもはじまりもない競争(まだ、相談芸術は終わってませんよね??)この世の“今だ見ぬもの”に対する渇望感を感じていられるよう、フットワークを軽くしておきたい。(小林さん)
特に変化というものは感じませんが、ただ素直に受け入れてしまった事実は変化という感覚を伴わないで(自覚しないという意味で)あったかも知れません。“求めよ、さらば与えられん”というように、何も求めていないものには与えられても気付かないものです。未来を思いわずらうこともなく、今という時にフォーカスしていることがやはり、いちばん楽しいことのように思う今日この頃です。(平石さん)
相芸大にかかわったことによって、生き方そのものをも変えてしまったり、大学終了後も有志で集まりを持つなど、皆さんにお話を伺えば伺うほど、この大学の影響力の大きさを感じました。そして、同じ時間を共有したという一体感や、大学の運営を担うという、ものごとを動かす側に立つ面白さなど、相芸大が与えてくれた“場”の磁力がとてつもなく大きいものだったのだなと思いました。そんな、相芸大という“場”について、学長でありアーティストでもある小沢剛氏が、相芸大は“人が本当に出会う場”、と語っていたのがとても印象的でした。第2の相芸大はあるのだろうかと、ふと思いました。
最後に、お忙しい中、この取材にご協力頂きました、小林さん、井上さん、小菅さん、平石さん、その他数名のボランティア職員の方々にこの場をお借りしてお礼を申し上げます。(平野)
*本ページの内容は、1995年11月1日発行当時のものです。
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