特 集

なんでこれがアートなの?

―『開放系』を観て―(1)


 1994年4月2日から5月29日まで、「水戸アニュアル'94開放系−OpenSystem−」が行われた。水戸アニュアルは、水戸芸術館現代美術センターの学芸員のオリジナル企画で、毎年1回行われている。今回は渡部誠一学芸員*による企画で、展覧会のテーマは『開放系』。このテーマのもとで、柳幸典、田甫律子、蔡國強、刈谷博の4人の作家が選ばれた。


― 展覧会会期中のある日の午後。カフェでおしゃべりしているのは、さっきまでギャラリーにいた3人。20代くらいの男性2人 A、B と女性 C。

A:あー、疲れたぁ。作品が「濃い」っていうのかな、こういうのってさ。

C:わたし、何か全然よくわかんなかったわ。

B:どうして?

C:どうしてって言われても、わかんないものはわかんない…。

A:おもしろくなかったの?ぼくはすごくおもしろかったけどなー。

B:うーん。例えば、何がわからなかった?

C:例えばねぇ…。そう、あれ。あの、松の木がぶらさがってる部屋で、お墓があったじゃない。なんで、お墓が美術なのよ。ただ、誰かのお墓がそこに置いてあっただけじゃない。

蔡国強 「長生」

A:お墓が美術館にあるってのがおもしろいんだよ。

B:あれは、お墓だけが作品じゃないんだよ。あれは、蔡國強さんの『長生』っていう作品で、あの部屋全体が作品なんだ。

C:うん、それはなんとなくわかるんだけど、でも、蔡國強さんがあのお墓を彫って作ったわけじゃないでしょ。あれは、誰か職人さんが作ったものじゃない。自分の作品だって言っておいて、他人が作ったものを並べていいわけ?

A:うわっ、キツイなー。…でも、そう言われると、ぼくも自信なくなってきたなあ。

B:蔡國強さんの今回の作品は、中国の『風水』の思想をテーマにしてるんだ。航空写真のCGが壁にあっただろ。あれは、水戸市をその『風水』によって調べた結果が表してあるんだ。そういう現実の世界に対して、死後の世界という意味でお墓を置いたんだ。『風水』では、お墓のことは「陰宅」、現実の世界での家は「陽宅」って言って、対になるものとして考えられているんだよ。

A:じゃあ、お墓はその「陰宅」を表すもの、つまり、象徴みたいなもの、として置かれてるんだね。

B:そうだと思うよ。そんなふうに意味を持たせてその場所に置く、ていうことが、作家の表現の方法になってるんだよ。

C:自分の手で作ったものじゃなくてもいいんだ?

A:でも、その場所に何を置くのかっていうのは、作家が選んでいるんだよ。

B:そうそう。作家は何か表現したいことがあって、それを表現するためにはどうすればいいかって考えてるんだよ。それで、自分で絵を描いて表現しようと思う人はそうするし、お墓を持ってくることで表現できると思えばそうするし。

A:作家の考えてることとかをどう形にするか、てことなんだね。

C:ねえ、それじゃあ、作品ってのは、手段なわけ? 作家の考えを伝えるための。

B:うっ…

*本ページの内容は、1994年9月1日発行当時のものです。



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